ユーロ円はECBと財政リスクの2軸で評価
欧州17力国の共通通貨であるユーロは、為替市場のプロにとっても、最も予測の難しい通貨とされる。最近ではギリシャ、ポルトガル、アイルランドといったいわゆる「周縁国」、さらにはイタリアの財政問題に焦点が当てられている。ドイツなどの支援国、国債格付け機関、EcB(欧州中央銀行)の3局の攻防をめぐって為替市場が一喜一憂する展開が続きそうだ。
ただし、予測の精度を上げるためには、まずは欧州金利の動きを読むのが手っ取り早い。実際、ユーロ/円相場を振り返ると、欧州金利の動きで十分に説明できる場面が多い。金利予想に際しては、「市場がどう見るか」「その後どう修正されるか」という2段階で考えれば、売り買いのタイミングのイメージもつかみやすいだろう。
まず、市場の予想は原油価格に左右されやすい点が特徴的だ。 EcBは原油価格の動きによってインフレ警戒ないし金融政策姿勢を変えてくると理解されているからだ。例えば、中国で強い景気指標が出れば、まずは原油高→ユーロ高となるだろう。
ところが、実際のEcBの実績を振り返ると、驚くほど景気指標(例えば失業率)との連動性が強いことが分かる。欧州の景気情勢がすぐれない場合、いずれ利上げ期待は修正を迫られ、ユーロ安に作用する局面が来る。
周縁国リスクについては、ギリシャなど問題となっている小国自体の動向よりも、それがユーロ圏経済規模の約12%を占めるスペイン、同17%のイタリアへとどう波及するかを考えるのが重要だ。これら「大国」の国債償還が難しいということになると、それをユーロ圈が自力で救済することは非現実的になってくるためだ。
当面のスケジュールとしては、9月前半と見込まれるギリシャ追加支援策の最終合意がユーロ持ち直しのきっかけとなり得る。それまでは、ユーロ不安は容易に払しょくされず、上値の重い展開が続こう。向こう3ヵ月間のユーロ/円相場レンジは109~118円を予想する。